漆黒の闇に、偽りの華を
あたしが絶句していると。
潤が夫婦に連れて行かれる。
「……っ潤!!」
追いかけようとするが、足に力が入らない。
このままじゃ、潤を失う。
そう思うのに、どうしたらいいのか分からない。
すると、去りかけた潤があたしを振り返る。
「茉弘。」
潤の顔は、優しく微笑んでいた。
「茉弘は、大丈夫だよ。」
大丈夫って何が?
潤がいなくてもってこと?
一人でも大丈夫ってこと?
そんなの大丈夫なわけないじゃない。
あたしの頬を涙が伝う。
これがあたしの見た、最後の潤の笑顔だった。