漆黒の闇に、偽りの華を
脱衣所で着替えて戻って来た恭は、黒のTシャツに縦ラインの入ったジャージ姿だった。
さっきの裸の時も思ったけど、体のラインが意外に逞しい。
優男の癖に……間違いなく、"男"なんだ。
「ふぅ~。」
恭は溜め息を付ながら、ごそごそとあたしの居るベッドに入ってくる。
「ちょっ!ちょっと!!」
「いつも、ここから2時間位仮眠を取るんです。この時間だけは、誰もこの部屋には入って来ない……だから、茉弘もまだ寝てていいですよ……。」
布団に潜り込んだ恭は、もう既に微睡んでいる。
よく考えたら、この人も寝てないんだよな。
普段からあの時間に活動してるんでしょ?
まとまった睡眠ていつ取ってるんだろ?
微睡む恭を見て、ベッドから出てけなんて到底言えない。
ていうか、元々恭のベッドだし。
「……眼鏡……邪魔だから取りなよ。」
そっと、彼の眼鏡を外す。
うわ。
やっぱり綺麗な顔してるじゃん。
眼鏡してると分からないけど、睫毛長いな。
眼鏡ないだけで、こんなに印象が変わるんだ。
恭が寝返りをうつ。
ふわっと良い香りがする。
あ。
これ、さっきの布団の香り……。
恭の香りだったんだ。
あたしは、はっと我に返り、慌ててベッドから出ようとする。
あたし何ドキドキしてんだ!!