漆黒の闇に、偽りの華を





夏の夕暮れ時、この時間帯はまだ十分明るい。


なのに、この付近は昼間とは打って変わって急激に人が減少する。


カラスの鳴き声が、治安の悪い時間帯への突入の合図のように、一般人を威嚇しているからなのか。


昨夜は暗かったし、ヘッドライトの明かりだけではよく見えなかった周りの風景。


こうやって見てみると、年期の入った治安の悪さが伺える。


崩れかけたコンクリートに描かれたカラフルな絵や落書き。


そこら辺に転がったゴミや空き缶や吸殻。


壊れたバイクとか、タイヤとかもその辺に放置されている。


よく見ると、ちょっとガラの悪そうな人達もちらほらたむろってたりする。


それでも、何処かで喧嘩が勃発するわけでもなく、まだサラリーマンや女の人がこの道を行き交っていられるのは、最低に治安の悪かったこの地区を"煌龍"が統率したからなんだ。


恭が、この地区を……。

< 73 / 200 >

この作品をシェア

pagetop