漆黒の闇に、偽りの華を
もしかして、あたしの事を探し回ってた……?
「い、今電話切ったばっかだよ!?」
「すぐ近くに居たみたいです。良かった……無事で……。」
恭は、大きな安堵の溜め息をつきながら屈みこむ。
「……大袈裟だよ。
ここは大分治安が良くなったんでしょ?そう簡単に何か起きるわけないって。」
「……だと、いいんですけどね。」
「?」
「ミーティングの時に話すつもりですが、今この地区は茉弘が思っているほど安全じゃないんです。」
「??」
恭の上がっていた息も漸く落ち着いてきたようで、ずれた眼鏡を直しながらゆっくりと立ち上がる。
「とにかく、本当に無事で良かった……。」
柔らかい笑顔でふにゃっと笑う恭。
その顔を見たとたん、胸がじんと熱くなる。
やばい……どうしよう。
あたし、泣きそう。
「……ん?」
恭が突然、眉間にシワを寄せてあたしの頬に触れる。
思っていたより大きな恭の手が触れて、あたしは思わず身をすくめる。
触れられた所から、じんわり熱が広がって熱い。