漆黒の闇に、偽りの華を
「これ……どうしました?」
「……え?」
「この口の端。少し切れてる。」
……あ。
さっき葛原に叩かれた時に出来た傷だ。
頬の腫れは、ぼーっとしてる間に大分引いたはず。
それに、暗いし分からないだろう。
でもしまった。
口の端の怪我まで気が回らなかった……。
「さ、さっき!転んだの!!」
うわっ。
苦しい言い訳……。
転んで口の端を切るとか……いくらなんでも、少し考えればおかしいって分かる。
恭は、一瞬眉をしかめて何か言いたそうな顔をしたが、すぐに無表情になって何も言わずにあたしを見る。