漆黒の闇に、偽りの華を
「わっ!わっ!ちょっと何してんの!?」
恭と呼ばれる男は、優男の見かけからは想像の出来ないような力で、あたしを軽々持ち上げた。
人生でお姫様抱っこなんてされた記憶のないあたしは、どうしたらいいのか分からなくて、取り敢えずやり場のない手で彼の頭をポカポカと叩くしかなかった。
「いたっ。痛いですっ。じっとしてて下さい。落としちゃいますよ。」
こんだけ叩かれて、全くびくともしてないくせに。よく言う。
この人一体何者?
まさか、“あの人”じゃないよね。
こんな優男があの人なわけあるはずがない。
「どこに連れてくのよ?」
そのままあたしに何も言わずに歩き出すものだから、不安になって叩いてた手を止め尋ねた。