本当に大切

それぞれの恋

俺は美華を、あの男のとこに行かせて自分の教室に向かった。

「おっはよ!たくまくん!」

と、俺の肩に手を回してるこいつ
新山春樹(にいやまはるき)。コイツとは中学からで、唯一の親友。
見た目はチャラいけど、結構友達思いのいい奴。

「あっちーよ。くっつくな。」

もう7月だぞ?さすがに暑い。
俺はその腕をどかした。

「あれ?美華ちゃんは?一緒じゃないの?」

春樹は、そう聞きながら俺の前の席のやつの椅子に俺と向かい合うように座った。

「あぁ、あいつ下駄箱で男に呼ばれてたから、行かせた。」

「は!?お前いいの!?」

「何が。」

「告白とかじゃねーの!?」

それは知ってる。何年見てきたと思ってんだよ。

「あぁ、多分な。」

「なんで、そんな余裕なわけ?」

そう、俺には根拠もなにもない自信があった。
美華は多分告白を振って帰ってくる。
という自信。

「また多分振るんじゃねーの。」

ーーガラッ

教室の入り口の扉が開いた。
美華が入り口から歩いてくる。

「なんだったの?あのー水島ってやつの話」

「え?あー別に大した話じゃなかったよ」

一瞬で分かる。
こいつ俺に隠し事してるって。

「お前絶対なんかある。昼休み屋上いくぞ。」

「へっ?分かった。」

その後からの授業は、色んなことが
頭の中をぐるぐる回ってた。

昼休み

俺は美華より先に屋上に行った。
ここは、運がいいことに鍵がかかってなくて、すぐ出入りができる。

俺は真ん中にあるベンチに座って雲一つない空を見上げていた。

ーーガチャ

屋上の扉が開く音がする。

美華だと思って扉を見ると…

「拓磨…」

「は?なんで?」

美華が、水島を連れて屋上に来た。

「ハハッ、どーしたんだよ。友達になったのか?良かっじゃねーか!ハハッ」

終始カラ笑いを浮かべながら、しどろもどろになる。

うまく頭がついていかない。

「友達なんかじゃないよ…?聞いて?拓磨…」

「あの…拓磨くん!」

馴れ馴れしく拓磨とか呼んでんじゃねーよ。

だめだ。水島の口から聞いたら立ち直れないような気がする。

「分かってるって!彼氏だろ?な?」

自分でそう言ったあとにやっと自分でも理解できた。

「そう…なの…///」

そう美華が言うと、2人は目が合って笑ってた。

今コイツ、長いこと一緒にいる俺にも見せたことない顔した。

そういう顔をこの男は美華にさせるんだな。

「そっか。仲良くしろよ。」

それだけ言って、俺は屋上を出た。

あの2人の顔を思い出すと無性にイライラして
授業なんて受けてる場合じゃなかった。

なんとなく察した春樹がうまーくごまかしてくれて。
俺はサボった。

ーーぽた、ぽた…ザーーーー

学校を出ると急に大雨。

天気予報では晴れって言ってたから傘は当然持ってない。

この降ってる雨が俺みたいで余計イライラさせる。

「あー!もう!」

俺は走りながら家に向かった。

家に着くと当然誰もいないから何も言わず、2階にあがる。

ベッドにカバンを投げて自分もベッドに倒れる。

「んだよ。今まで断ってきたじゃんかよ。なんてあいつなんだよ。」

だっせぇ。こんなんで涙とかまじないわ。
その夜も食欲はなかったけどなんとか食べた。とにかく無心であんまり覚えてない。


翌日


寝れなかったから、母さんに起こされる前に起きた。

「あら、早いわね!」

「ん、まぁな。寝れなかったし。」

1階に降りたときは着替えていたから、少しゆっくり朝食をとる。

すると

「たーくま!」

俺はいつもその声にだけは反応してる。

「は!?お前なんで来てんの。水島は?」

そーだよ。普通一緒に行くもんじゃねーの。

「朝は拓磨と一緒に行くからって伝えたよ!」

「はぁ?なんでだよ。ばっかじゃねーの?」

本当は嬉しいくせにろくな言葉も出ない。

「彼氏がいるような女と一緒に行っても意味ねぇじゃん。」

と小声で言う。

「ん?なに?」

「あー!もう!お前は水島と行け。」

とか言い放って玄関を締めた。

それから俺は美華を避けづけた。
一言も喋ってない。

そんな時…

「あのー、永島くん?」

美華じゃない声に振り向く。

身長は美華と同じぐらいで、どことなく美華に似てる。
離れても美華ばっか探してんだな、俺。

「あのー、美華ちゃんとは何にもないの??」

美華ってワードが出ただけで、反応するんだ。


「なんもねぇよ。」

少しぶっきらぼうに言ってみる。

「ほんと!?じゃあ、私と付き合ってください。」

「いいよ。」

俺は好きな人でもないやつと付き合った。
そしたら忘れられると思ったんだ。








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