夢喰い
男が去った後の友行は、まるで何もなかったみたいにまたぽやぽやと笑う。
なんだか分からないけれど胸が苦しくて、耐え切れずに俯く私。
「深紅、どうした?」
「……嘘、ついてくれたんだね」
「嘘?」
全く意味が分からないという風に首を傾げる友行。
私は涙が滲むのを必死に堪えながら言う。
「夢見悪いって、言ってたじゃない」
友行はまだ湯気の立つコーヒーをすする。
カップを置くとコトッと優しい音がした。