季節外れの花
「茜。」

自分の影を見つめていると、急に名前を

後ろから呼ばれた。誰かの影と自分の影が

少しずつ近付く。影が重なる。

「‥‥‥太陽?」

なんとなく、なんとなくだけどそんな気が

した。

振り向くとやっぱり笑顔の太陽がいた。

「久しぶりになるのか?」

よ!っていう感じに手を上げる太陽。

「この前会ったじゃん。」

「おぉー、そーやったな。」

忘れてたって笑う。

なんか、くすぐったい。でも、落ち着く。

「あ、タオル返してよ。」

「おぉー、そーやったな。」

首をポリポリとかく姿もなんか、なんか

くすぐったい。

でも、心の何処かはまた

あの痛みを連れて来た。

二人で並んで歩き初める。

影が二つ並んでいる。太陽の影の方が

大きくて。私の影は、小さくて。

歩くタイミングに合わせて影も揺れる。

沈黙の中。だけど、息苦しいとは

思わなくて。

あー、こういう時間久しぶりだな。

なんか、恥ずかしいな。

この前の太陽の手の感触が

頬に残っている。大きくて、温かい。

ごつごつしてて、指が長かった。

自分の手を頬に当てる。‥‥違うな。

『やっぱ、笑ってた方が可愛いぞ。』

ドクン

‥あ。なんか、そうとう痛い人だよ私。

こんな時にあの言葉を思い出すなんて。

「茜??」

「えっっ!?な、何?」

急に太陽が顔を覗き込む。

「いや、なんかぼーっとしてたから‥‥。」

「あ、うん。考え事してた。」

「そっか‥‥。」

ビックリした。心臓の音が速い。

もう、変なことは考えないどこう。

うつむいて、影を見つめる。

やっぱり、私と太陽の影が並んでる。

まだ、心臓の音がうるさい。
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