季節外れの花
「着いたぞ。」

太陽の背中にずっと見てていたので、

どこを歩いていたか分からなかった。

でも、

そこは懐かしい場所だとすぐに分かった。

「‥あ。ここ。」

初めて声が出た、そんな気がした。

「懐かしいだろ。」

そう言って、太陽は近くのベンチに腰を

かける。私も、その横に座る。

「懐かしいね。」

「あぁ。俺時々だけど、ここに来てる。」

どこか遠くを見るように、

太陽は目を細める。

その視線を追ってみる。

錆かけた鉄棒、風で揺れるぶらんこ、

小さい頃は、大きく感じた滑り台。

今はもう、小さくなっている。

‥‥いや、私たちが大きくなったのか。

「俺ら、よくここで遊んでたよなー。」

「うん。」

懐かしい。

何となく、あの頃に戻りたい。

そう思った。

チクッ

胸に刺さった何かは、まだ取れてない

みたい。何かの拍子に、痛みの意味を理解

するかもしれない。

でも、それはいつだろう。

ただ、今は理解したくない。そう思う。

今だけでいいから、今だけでいいから‥‥。

あとちょっと、心に余裕ができて。

自分のことを好きになったら、

理解するから。今は、ダメ。

「俺さー、こう見えてもあのストラップ選ぶのに、時間かかったんだぞ?
もっと、俺に感謝しろ。」

いつもより弱々しい太陽の声。

私のことを、気にしてるのが

何となくだけど伝わってくる。

ありがとう。

選んでくれたんだ。私のために。

「うん、ありがとう。」

本当に、心から思っているから。

ありがとうって。

「どーいたしまして。」

嬉しそうに、笑う太陽。
< 20 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop