季節外れの花
「じゃーね!」

佳奈が大きく手を振って帰って行く。

それは、あの時の姿と似ていて。

決意したはずのあの日。

太陽の目が綺麗だと知った日。

応援するって決めたのに。

なのに、今さら胸が痛い。

『そーじゃねぇーだろ。お前が言いたいこと。ちゃんと、前向け。』

あれは、何?

その言葉と重なるのは、太陽の目。

夜の中で光を持った、目。

微かにあの時揺れた、目。

なんで、こんなに苦しいの?

「ばいばーい!」

想いを消すように、大声で手を振る。

それに答えるように佳奈がまた手を振る。

佳奈の隣にいる奈緒も小さく手を振る。

チクッ

今度からは、この痛みと

一人で向き合うしかないんだ。

「ねぇ、茜。」

隣にいた、結衣加ちゃんが溜め息をして、

私を見る。

「茜は、それでいいの?」

「‥‥‥え?」

二人の間に、夜の夏の風がふく。

結衣加ちゃんの淡い青のスカートがそれに

あわせて揺れる。

「いや、なんとなくだけど…。」

うつむいて、言葉を探しているように

見えた。

茜は、須田君のこと好きなのかなって

ずっとさ、思ってたから。

二人の間にまた、夜の夏の風がふく。

「結衣加ちゃん??」

「いや、なんでもないやー。んじゃあ、ばいばーい!」

手を振って帰って行く。

え?あれは、何だったの?

さっきの言葉は聞き間違え?

そーだよね?そーだよ。

そーだよね‥‥。
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