季節外れの花
「良かった、良かった。」

なるべく、明るい声で笑う。

「もっかい、寝よ。」

ゴロンと横になって、毛布にくるまる。

「うっ、うっ‥‥‥‥。」

涙が溢れてきたけど、必死に抑えた。

毛布で目を擦る。

痛いけど、胸の痛みとは違った。

「うっ、うっ‥‥‥。京介‥‥‥。」

涙がこぼれないように、目を閉じたら。

そこに写ったのは、京介の笑顔。

『笹川さん、今日俺と日直だから。よろしくね。』

初めて話しかけてくれた時の、笑顔。

『茜?どーした?』

私のことを、茜っていい始めてくれて

嬉しかった。

『お前ぐらいしか、こんなこと話せねぇーよ。』

あの時から、私辛かったんだよ?

私には、見せないような目で奈緒を見てる

って知ってから。

私に向けられた、笑顔。

奈緒に向けられた、笑顔。

それに、違いがあるって知ってから。

ずっと、苦しいよ?
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