季節外れの花
「よぉ。」

玄関に出ると、

ちょっとだけ不機嫌な顔の太陽。

少し、眠そうかも。まぁ、朝だし。

「やっほ。」

頭をボリボリ掻いてる。

やっぱり、不機嫌そう。

そしたら、急に私の手を引っ張って

歩き出す。

「えっ?どこ行くの?」

引っ張られていく私。

またいつの日かの痛みがわき出てきた。

なんとなくだけど、

その手を振りほどけない。

ただ、手を引っ張っていかれる私。

痛い。

大きな手が私の腕を強く引っ張っていく。

けど、やっぱり振りほどけない。

太陽が、足を止めた場所はあそこだった。

私が、全てを太陽に言ったところ。

ドスッとまた、あの日と同じ

ベンチに座る。

まだ、空が明るい。

「あのさぁ、京介に聞いたよ。」

「え?」

今日は、あの日みたいに

太陽の目が見えない。

それがなんだか悲しくて。

聞こえてるよ、太陽の質問。だけどさ…。

なんとなくだけど、

この話になる気がしてた。

どこかで期待してたのかもしれない。

「京介‥‥付き合ったてな。」

そっか、太陽と京介は仲良かったんだ。

中学の頃、よく遊んでたのみてたっけ。

京介、太陽に言ったんだ。

「‥うん。知ってるよ。」

知ってる、知ってる。

だからって、私に何ができるって言うの?

「‥なんでだよ。」

かすれた声。少しだけ、震えてる。

「‥なんでって何?もう、決まったことなの。今、私がどうしようと、遅いよ。」

あぁ、こんなことを

太陽に言いたかった訳じゃないのにな。

「お前、告ったのか?」

チクッ

「‥‥って、ないよ。いって、ないよ。」

「なんで?」

なんで?ってさぁ。

「‥‥いや、なんかねー。そんなに、好きじゃなかったからさ。ただ、友達として好きだったんだ。って思ったから。だからね、告わなくてもいいかなー。て、思ったの。それだけー。」

うん、それだけ。ただ、それだけ。

「本当?」

やっぱり、不機嫌そうな太陽の声。
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