季節外れの花
『笹川さん、だよね?』
明るい笑顔で近付いてきたのは。
『‥‥はい。』
『俺、真田翔吾。よろしくね?』
『あ、はい‥。』
急に話しかけてきて、驚いたけど。
かっこいいって思った。笑顔が特に。
でも、
『あのさー、京介さ。彼女さんできたみたいじゃん。大丈夫なの?お友達にちゃんと言ったの?ほんとのこと。』
私は、驚いて振り返ってしまった。
その時、しまった。と思った。
私と目があった真田君はものすごく
ニヤニヤしてた。
ズキン
ちょっと、チャラい口調と
さっきと違う笑みを浮かべているのが
気になったけど。
それ以上に。
私が今まで隠していたところを
突いてくる。
それが、無償に嫌だった。
『‥はい?だからなんですか?』
知らないふりをしている私に、笑う。
『まぁ、俺には関係ねぇーけど。笹川さんは関係あるじゃん?ちゃんと、お友達と向き合わないと、無くしちゃうよ?』
たしかに、身に覚えはある。
でも、なにこの人?
私は、聞こえないふりをして。
道具箱に今日は箒が入ってなかったので
雑巾を掴み立ち上がる。
『え?行っちゃうの?俺のこと、無視っすか?』
いや、知らないし
なんだか、ここにいたら自分の嫌な部分が
全て出てきそうなので歩き出す。
『まぁ、いいや。あ、俺彼女募集中だからよろしくね♪』
知らないし、そんなの
なんなの、あの人。
イライラして、歩くけど。
頭は、あの言葉を繰り返してる。
それは、今まで見てなかったもの。
見ようとしなかったもの。