季節外れの花
「太陽…。」

帰り道。

空は少し、紅に染まってきて。

ドクンドクン

茜。

そう呼ばれることを何処かで期待してる。

二人の影が並ぶことを何処かで期待してる。

でもそれはもう、京介の声じゃなくて。

京介の影じゃなくて。

きっと、もっと

大切にしなきゃいけない人の。

声で。影で。

ありがとう。

っていっぱい言わないといけない人。

目が綺麗な人。

眩しい青が似合う人。

「太陽…。」

また、呟いた。 君の名前を。

けど、もうここには君はいない。

隣で歩くことも叶わない。

声を聞くことも。

あんなに綺麗だった目を見ることも。

空はまだ、明るいのに。

君はいないんだね。
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