季節外れの花
「ただいま~」
家に着くと、お母さんが楽しそうな顔
で迎えてきた。
「どうだった~?」
靴を脱ぐ私に、意味ありげな笑みで
聞いて来る。
「何が?」
台所に向かう私に、ちょこちょこと
ついて来るお母さん。
なんで、そんなに楽しそうなんだか。
「太陽君と久しぶりに会ったんでしょ?」
「うん、そうだけど?何で?」
私は、冷蔵庫からペットボトルを出す。
喉が渇いてたのか、ごくごくと飲む。
お母さんは、それを見ながらなぜか
嬉しそう。そして、どうしようと
次に言う言葉を焦らしている。
もう、いいや。
なかなか、言葉を出さないお母さんを
おいて、自分の部屋に行く。
「はぁー」
盛大なため息をはきながら、自分の部屋の
ドアを開ける。
ポケットからキーホルダーを取り出す。
机の引き出しを開けてキーホルダーを
その中にしまいこむ。
そっと、キーホルダーを指でなぞる。
きれいだな。花びら一つ一つ、繊細な
曲線で削られている。
「ありがと、太陽」
そう言って、引き出しを閉めた。