ファインダー越しの恋
それを見たヒイロは、可笑しそうに、ハハッと笑い、オフィスを出ていく。

私は慌てて、重い機材を持ちながら、ヒイロを追いかけた。

・・・そんな私たちを、面白くないと言った顔で見ている人がる事にも気づく事無く。

…カメラマンの助手が、こんなにも大変なものだとは思わなかった。
ヒイロもきっと、同じように、誰かの下に付いて、何年も助手をしていたに違いない。

そう思うと、尊敬してしまう。

「・・・ひゃあ!」
突然、私の頬に、冷たい缶が押しつけられ、変な声を出してしまった。

「色気のない声だな」
そう言ってフッと笑うヒイロ。

「そ!そんな事されて、色気のある声なんて、出せるわけないじゃないですか?」
真っ赤な顔で反論する。

「…じゃあ、その色気のある声、聞かせてくれる?」
「///!!」
耳元で囁かれ、更に顔か赤くなっていく。

「こんな事くらいで、顔を赤くするなんて、可愛いな」
「なっ!」
…どこからどう見ても、私で遊んでいるヒイロ。それに上手く弄ばれている自分が情けない。


「そこで、休憩してな。もう少し、写真撮ってくるから」
そう言うと、私をベンチに強引に座らせ、ヒイロは写真を撮りに行った。

・・・写真を撮る姿は、本当に様になる。

…悔しいけど、カッコいい。

…カシャ。・・・ん?・・・あ!
私は思わず立ち上がった。

「また、性懲りもなく撮りましたね?!私の無防備な姿!!」
そう怒りながら、カメラを撮り上げようとしたら、不意を突かれたヒイロは手を滑らせた。

ヤバい!高級カメラが!!
私とヒイロは慌ててそれを取った。

…ドサッ。
芝生の上に倒れ込む。

…カメラは無事。
・・・でも。

私の心臓は、破裂しそうだ。
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