ファインダー越しの恋
3.写真に写し出されたその心
その夜も、その次の日も、…何日たっても、そのキスが忘れられなかった。

…俺の事は諦めろ。そう言われたのに。あのキスを、もう一度、してもらいたい。なんて思うなんて、私もどうかしてる。

「…その写真、誰が撮ったの?」
「・・・え?」

仕事の休憩中。私は、ヒイロから貰ったあの写真を眺めていた。
それを、和美が見つけたのだ。

「…とっても素敵。素人じゃ無理ね、そんな写真」
「…ヒイロさんです」

私の言葉に、和美は目を見開いた。

「・・・あの、どうしたんですか?」
不思議に思いながら、和美に問いかける。

「ヒイロって、モデル以外、人間を被写体に、写真を撮る事がないの」
「・・・え?!」

和美の言葉に、今度は私が驚く。

「良かったわね、プロに撮ってもらえて」
そう言って、ニコッとした和美は、書類を持ち、その場を去っていった。

…私は、その写真を見つめた。

…モデル以外の人間は撮らない?…それは一体なぜなのか?
…もしそれが本当だとして、それならなぜ、この写真を撮ったのか?

・・・そしてなぜ、それを私にくれたのか?

…ヒイロと言う人間が、増々わからなくなった。

********

…なぜ、あの子の写真を撮ったの?

私はあんなに、頼んだのに、ただの一度も撮ってもらった事がない。
携帯の写真ですら、2人で撮る事はなかったのに。

ヒイロと、私の付き合いは長い。もちろんそれは仕事上での付き合いであって。
彼氏彼女と言う関係になる事はただの一度もなかった。

「おい、和美、この間の写真出来たぞ」
「・・・あ、ありがと、…ヒイロ」
自分の想いは、心の中にしまい、笑顔でヒイロと会話をする。
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