ファインダー越しの恋
ヒイロも、いつもと変わらない顔で、私と会話をすると、自分の仕事の為、その場を立ち去ろうとした。

「…ヒイロ」
「・・・何?」

行こうとするヒイロを咄嗟に止めた。
ヒイロは黙ったまま、私を見下ろしている。


「・・・桜子ちゃんの写真、撮ってあげたのね」
「・・・・」

「…あの子の事が、好きなの?」
「…何でそうなるんだよ」

ヒイロはそう言って笑う。
…だって、仕事以外で人間の写真を撮るのは好きじゃないってあれほど言ってたくせに。

「…たまたまだよ。桜の写真を撮ってたら、カメラに収まっただけ…それだけ」
「・・・そう」

・・・そんなのウソに決まってる。
あの写真は、桜を撮ったものなんかじゃなかった。

…絶対、桜子を被写体にして撮られた物だった。
・・・まるで、愛おしい物を写真に納めたかった。そんな、想いの詰まった写真。

…ヒイロは、きっと、桜子の事が好き。


「ヒイロは、誰とも付き合わないの?」
「…前にも言っただろ?俺は誰とも付き合う気なんてない。…面倒なだけだからって」

そう言うと、その場を去っていったヒイロ。
私はその場から、しばらく。動けないまま、ヒイロがいなくなった方を見つめていた。
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