ファインダー越しの恋
…2枚の写真を見比べていた。

一枚は、桜をキラキラとした目で見上げる桜子の写真。
もう一枚は、葉桜を泣きながら見上げる桜子の写真。

…なぜ俺は、こうも、桜子を見ると、写真を撮りたくなるんだろう?
プライベートで、人の写真を撮る事があんなにも嫌いだったのに。

・・・写真を撮り始めた頃は、人ももちろん撮っていた。気に入れば、被写体なんて誰でもよかった。もちろん、風景の写真も大好きだ。


・・・そのうち、その腕を買われ、プロのカメラマンになり、色んな写真を撮っているうちに、1人のプロカメラマンに出会った。

彼は、妻子をこよなく愛する優しい男気のある、最高のカメラマンだった。

そんな彼に頼まれた一枚の家族写真。撮ったその日に、彼は外国に飛び、撮影中。とある事故により、命を落とした。

それなのに、妻は涙一つ流さなかった。
妻には、愛人がいた。彼が亡くなった事を喜んでいるようにも見えた。

…満面の笑みで撮ったはずの家族写真。…それはすべて、偽物だったのかと思うと、胸が締め付けられた。

・・・自分が撮るものは、すべて偽物ではなく、本物を撮りたかった。
こんな思いをするくらいなら、もう二度と、プライベートで、写真は撮らないと決めた。

それと同時に、女と言う存在を信じる事も出来なくなった。

だから付き合う事も無くなった。

・・・近寄ってくる女は、すべて、俺の上辺だけを求め、近寄ってくる。
否定も、肯定もせず、受け入れては、簡単に捨てていた。


・・・そんな俺だったのに、桜子だけは、自分のカメラに写したくなった。
・・・その心境の変化が、自分でもわからない。

…なぜ、彼女だけは、写真に撮りたいと思ったのか?

…なぜ、俺は、彼女を見ると、目が離せなくなるのか?
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