ファインダー越しの恋
…なんともいえない空気になった。…それを破ったのは、桜子の携帯。

桜子は、俺達に頭を下げると、少し離れたところで電話を始めた。
どうやら、仕事の電話のようだ。手帳を広げながら、会話をしている。

・・・その時だった。…手帳から、一枚の写真が、ひらひらと落ちてきた。

それを拾ったのは龍也。・・・その写真は、初めて桜子を撮った時の写真だった。

「…プロの写真」
龍也が呟く。…そしてすぐに、俺を見た。

「この写真、貴方が?」
「…そうですけど、何か?」

…俺の顔を見て、フッと笑いやがった。

「桜子の事が、好きで、好きで、しょうがないって言った写真ですね」
「・・・・」

龍也の言葉に、驚いた。
…俺が?・・・桜子の事を、好き?


「…ダメですよ、桜子は渡しません」
「なっ・・・」

「…だって、桜子は、俺の彼女なんですから」
「・・・・?!」

目を見開いた。


「すみません・・・あ、写真、拾ってくれたんですね、ありがとう」
そう言って龍也から、写真を受け取る桜子。

「いいよ。…素敵な写真だね」
「はい、自分で言うのもなんですけど、この写真、とっても好きなんです」

そう言ってニッコリ微笑んだ桜子。
・・・その言葉が、嬉しくないわけがない。

…俺の写真が好きだと言ってくれた桜子。
…俺が撮りたくて撮った写真。


…俺は、・・・桜子の事が。
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