ファインダー越しの恋
「…なぜ、泣いてる?」
「…その写真、今すぐ消してください!」

「…」
「泣いてる写真なん…⁈」
怒鳴ろうとしたが、一枚の写真が、私の顔に置かれた。

「…これ、やるよ」
そう言って、私にそれを差し出す。
私は、それを受け取ると、写真を見て、驚いた。

…あの日、入社式の時、桜並木を、キラキラとした目で見上げていた私が写されていた。

…プロの写真。…自分じゃないみたい。

桜吹雪の真ん中で、嬉しそうに桜を見る私。これからの生活に、夢をふくらませた私。

「…何があったか知らないが、そんな泣き顔より、その写真に写っている顔みたいに、笑顔でいろ…」

「…ヒイロさん」

「…じゃあな」
それ以上何も言わず、ヒイロは会社に向って歩き出す。

「なんで!」
「…」

「…ずっと、会社に来なかったんですか?」

…。
もう一枚。私に写真を手渡すと、会社の方へ、姿を消した。
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