猫の恩返し
「どーしようもねーヤツだな」


「え?誰がですか?」


「係長に決まってんじゃん」


「ですよね!それで牧野さんが怒っちゃって、そのまま別れちゃったらしいです。それから係長の女遊びが始まったみたいですけど………」


「くっだらねぇ…。ガキかよ…」


ポツリと呟いてみたが、それは俺自身にも言えること


───今更、どうにもなんねーだろ…


アイツと───雅美と会ってから、余計なことが頭をよぎる


「トーゴ!」


ヒョイと視界に現れたナツ


「かかりちょーが送ってくれるって」


足元には、係長が車に積んでいたらしいビーチサンダルを履いている

ピョンピョンと飛び跳ねる無邪気なナツを見ていると、色んな柵(しがらみ)に囚われているのが馬鹿らしくなるから不思議だ


「電車で来たって聞いたから。迷惑じゃなければ」


懐かしいラムネの青い瓶を片手に持ち、もう片方の手で車のキーをクルクル回している


「いいんですか?」


「いーよ、別に。ついでに、帰りにうちで飯でも食べてけば?」


腕時計を見ると、もう4時

思いの外、時間が過ぎていたらしい
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