猫の恩返し
『自己中』

そう言ってボヤく牧野をなだめる


「琴美さん、顔怖いよ?」


誰も触れなかったことをサラッと言うナツ

彼女を怒らせたらどんな雰囲気になるか、分かっている俺達にはとても出来ない

ある意味で無敵だ


「………そんな顔してた?」


我に返ったように顔をペタペタ触り、パンッと一回叩いた後『よしっ』と意気込んだ

先にロビーへと向かう係長と下村、ナツの3人から少し距離を開けて歩いていた牧野の肩を指先で叩く


「何ですか?」


こちらの意図を理解したのか、小声での返事


「お前さぁー、もうちょっと係長に優しくしろよ」


さすがに、同じ男として係長が可哀相になってきた


「ちゃんと対応してますけど?」


「じゃなくて、冷たいって」


「本来なら、口を聞くのも嫌なので」


「………」


そんな風に言われては、返す言葉もない


「ちょっとー!2人で何コソコソ喋ってんの」


「係長には関係ないことです」


バッサリ言い捨てられ、眉を八の字にして俺を見た係長に、ただ首を横に振ることしか出来なかった
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