猫の恩返し
「トーゴ、どうしたの?」


キョトンとした顔で俺を見上げる


「………何でもねーよ」



「なぁに?ねぇ、なぁーに?!」


しつこいとは思いつつ、本人に悪気があるわけではないのを知っている分だけ邪険に出来なくて───


「………係長みたいだったらよかったな…って、そう思っただけ」


本音が漏れた


「何で?」


ナツはいつだって素直で純粋だ

子供の頃の素直な心をなくしてしまった今の俺には、それが逆に苛立つ原因になったり…


「俺も…親が金持ちだったら、色々楽に生きられたのかな…って思ってさ」


うまくいかないことを、誰かのせいにしてみたり…

親が悪いんじゃないって分かってる

このご時世、就職すら出来ずに大学を卒業するヤツが居るのも知ってる

だけど───


「トーゴはトーゴのままで居てよ。だから私、拾ってもらえたんだし。トーゴじゃなきゃ………今ここに居られたかどうかも、分かんないもん」


時々、ハッとさせられることを口にする
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