猫の恩返し
「ね?」


丸い金色の目を見つめると、満面の笑みを浮かべ猫そのものの表情になった

過去に抱いた恋心とは、また違う感情が湧いてくる


「そうだな」


ナツを見てると、本当にどうでも良くなってくるから不思議だ

頭を抱え込むように引き寄せ、ワシャワシャと髪の毛を撫で回すと、気持ちがいいのか悪いのか…ピンと一瞬背筋を伸ばした後、プルプルと頭を振った


「ちょっとぉ───…、ここ俺ん家」


「へ?」


「イチャつくんなら、自分家に帰ってよ」


係長の声に顔を上げると、興味津々の下村に、苦笑いの牧野、ブスッと膨れた係長が俺達を見ている


「サッサと食べて、サッサと帰って」


「いや…今のは、違…」


「何が違うんだよ。俺に対する当て付けでしょ?そうでしょ?そうでしょ!小岩井くんなんか嫌い!」


あ─────…

扱いにくい上司


イラッとするし、訳は分かんないし、苦手だけど───なぜか憎めないのは、この人の人徳のせいかもしれない
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