猫の恩返し
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「きれ─────…」


眼下の景色に嘆息するナツ

空を見上げてみる

今夜はタイミングよく満月だ

普段生活している地上よりも高い、丘の上にある公園

余計な明かりがないからか、星もいつもより多く見える

カタンカタンと線路を鳴らす電車の音が、風に乗って小さく流れてきた

湿っぽい夏特有の蒸し暑さも、ここではあまり感じられない


「キラキラしてる…」


市内が一望出来るスポット

車がないとなかなか来れない場所ということもあってそこまで人が多いわけではないが、空気が澄む冬になると、寒さに震え身を寄せ合いながら街を見下ろすカップルが増える


「トーゴ、すごいね」


さっきから、街を見下ろしたまま独り言のように呟くナツ


「私達…あの中で暮らしてるんだ?」


「…そうだな」


昔に比べて外灯も増え、夜間の安全が拡充された代わりに、いつまで経っても消えない…眠らない街になってしまった
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