猫の恩返し
「………そんな言い方はないよな…」


「………」


「悪い」


あー…

何で俺って、こーやって相手の機嫌損なうことばっかやってんのかなぁ…

特に女が相手だと、どーしたらいいのか想像もつかねーし


「………いーよ、別に…」


全然、よくねーじゃん…


眉間に皺を寄せ、プーッと頬を膨らませるナツから視線を落とし、茶色い地面を眺めた


「俺さ………。ずっと勉強に明け暮れてきたから、人と関わるのとか苦手だったんだ…」


恋人らしい付き合いが出来なかった中学生以降、公務員になるため高校も大学もそれなりのところに行き、勉強にのめりこんだ

バイトだとかコンパだとか…

そんなものとは対極の場所に居たから、他人との距離の取り方が分からない

そうして自分の世界に没頭していた俺が、就職して初めて出会ったのが雅美だった
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