猫の恩返し
「トーゴはさ…。まだ、あの人のこと好き…なの?」


俺の左の手のひらを両手で包む

ナツを見下ろしても、頭のつむじしか見えない


「いや…、言っただろ?関係ないって…」


「関係ないっていうのと、好きかどうかっていうのは、全然違うよ?」


本当…ナツの言うことは正論過ぎて、返答に困ってしまう

顔を上げたナツを直視できなくて、視線を逸らした


「もう何とも思ってないって。それに、ナツは気にしなくてい───」


「気になるっ!」


突然の大声に、彼女を凝視する


「気に………なるよ」


「何………で…?」


「………」


なかなか口を開かないナツに、ふと思い至った一つの結論


「………ナツ?」


───まさか…な


「………トーゴには…ちゃんと幸せになってほしいもん…」


「へ?」


想像もしていなかった返事に、言葉が出ない
< 135 / 215 >

この作品をシェア

pagetop