猫の恩返し
「私は、そんなに長く生きられないから…。だから───…」


「長く生きられない、って…どーゆーことだよ…」


俺を握り締めている手が、ビクンと動く


「もしかして───病気…なのか…?」


「───っ、違うよ!」


首が取れるんじゃないかと思うぐらい、激しく頭を振った


「───猫は…人と比べて、寿命が短いから…」


「それ…一体どこで………」


「トーゴが買ってきた本…。読めないから、琴美さんに読んでもらったの…」


『猫の飼い方』か───


何気にテレビの前に放置してたのが悪かったらしい


「………」


「………」


慰めの言葉も出てこない


「大丈夫だよ、私は平気。だけど…せっかくトーゴの身の回りのこと色々出来るようになってきたのに、私が居なくなっちゃったら、またトーゴが困っちゃう…」


「俺は今まで独りだったから気にすんな…。それより………」


居なくなるとか…そんなこと───


彼女の言葉は、思った以上に胸をえぐった
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