猫の恩返し

「だから、早く彼女見つけて結婚してね。そしたら私…安心して───」


ナツの目に涙が溢れ、頬を伝い流れ落ちる


「あ………。でも、トーゴに彼女が出来ちゃったら、私家には居られないね…。彼女出来たら、ちゃんと出て行くから…」


目尻に溜まった涙を人差し指ですくい、微笑むナツ


「───お前は、まだ１０年も２０年も生きるんだよ…。お前が死ぬ時は、俺が傍で見届けてやる」


目の前に居るのに、言いようのない不安に襲われた

消えてしまわないようギュッとナツを抱き締め、彼女の頭に頬を擦り付ける


「そんなことしたら…」


「今、そう決めた。これだけは絶対に譲らない」


自分に言い聞かせるように、そっと呟いた


「トーゴ…」


ボロボロ泣きながら、俺の腰に手を回し力を込める

ニイニイゼミが、静かな公園内で怒ったように鳴いていた