猫の恩返し
相手は猫なんだ

あり得るわけがない


「俺は───」


「『好き』かどうかは分からないにしても、あの子のことは『特別』…でしょ?」


「………」


「違う………とは、言わない…のね」


否定は出来なかった


「………失礼…致しました」


もう一度深く頭を下げ、署長室を後にする



───俺は………


雑念を振り払うように頭を振り、持ち場へと戻った



△▼△▼△▼



『ちょっとー、小岩井くーん。小岩井くーん?ねえ、小岩井くんってばっ!』


「───あの…主任?」


下村に目の前で手を振られ、ふと我に返る


「ん?どした?」


書類から顔を上げた


「………大丈夫ですか?」


「別に…。普通だろ」


俺が首を傾げると、下村も同じように首を傾げる

牧野も、遠巻きに俺の様子を窺っているみたいだ
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