猫の恩返し
「普通じゃないですよ。さっきから、係長が何回も主任のこと呼んでますけど?」


「え…」


下村から係長へ視線を移すと、眉をこれでもかというほど寄せた係長が、顎に手をつき俺を見ていた


「呼んだよ、最低5回は」


「す、すみません!」


慌てて立ち上がる

その拍子に椅子が勢いよく後ろに滑り、壁に激突した


「ちょっ…小岩井くん。壊しちゃダメだよ」


呆れたように笑う係長の、普段通りのペースに少しだけホッとする


「すみませんでした」


幸い、課長は研修で昼から出張中だ


「ひょっとして署長に何かされたー?小岩井くん、朝からずっとそんな調子じゃん」


うししという下品な笑いに、不快な顔をする牧野と下村

何かをされたわけじゃないが、雅美の言葉に振り回されていた事実に、ただ笑うことしか出来なかった
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