猫の恩返し
「決裁…印鑑抜けてる」


サッカーの審判が選手にカードを示す時のように、書類をピッと上げて俺の目の前に突き出した


「あ………」


俺の名前の欄が空白になったままだ


「すみません。もう一度、内容確認して持ってきます」


両手で受け取ろうと手を出すと、スッと書類を引っ込められた


「あの…」


「これ…。朝からの分、全部」


書類を持った手と反対の手で、机の上に乗った書類をポンと叩く

今日はそんなに見た覚えがない


「え?」


「俺ね、小岩井くんは真面目が取り柄だと思うんだよ。だから何があったか知らないけど、何か思うところがあるならちゃんと相談してよ!ね?」


『はい』と言って書類を手渡されたので、仕方なくそれを持って席に戻った
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