猫の恩返し
「じゃあ部屋は別でもいいから、一緒に寝ようよ」


それが出来ないから部屋を分けたんだろ


本音を言いたくて堪らない

だけど、それを言ってしまえばおしまいのような気がして、適当にはぐらかした


「何か欲しいものあるか?」


前の部屋は狭くて何も置けなかったから、この部屋では置き放題だ


「………じゃあ…ベッド」


「他には?」


「要らない」


「は?」


「要らないっ!」


ムスッとする理由が分からない


「じゃあ、今から見に行くか?片付けはいつでも出来るけど、ベッドは今日ないと寝るのに困るだろ」


日曜の昼下がり、冷え込み始めた今の時期にはちょうどいい時間帯だ


ついでに外で昼飯でも食うか


玄関に向かった俺の後ろを、無言でついてくるナツのことを気に掛けながら家を出る
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