猫の恩返し
ビクンと震えるナツの体

怯えたような目つきで俺を見上げたかと思うと、一瞬でボロボロと涙をこぼす


「───っ、トーゴなんか嫌いっ!大っ嫌い!」


「おい!ナツ!」


グイッと目元の涙を拭き、俺の横をすり抜け走り出した

伸ばした手は払いのけられ、宙をさまよう


「ちょっ…待てよ!」


普段運動をしていないとはいえ、俺も男だ

女の足にはすぐに追いつく

そう思っていたのに───


「………どこ…行っ…」


30という年のせいか、はたまた運動不足か───

息を切らして追いかけたが、ナツの後ろ姿を見失ってしまった


猫だから足が速いのか?


ナツの怒りの真相は分からないが、とりあえず何をどうするべきなんだろう

考えても、妙案は浮かんでこない
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