猫の恩返し
3時………か


腕時計に目を落とすと、思った以上に時間が過ぎていることに気付く

この辺りに土地鑑はあまりない

下手に探し回って時間を潰すより、そのうち帰ってくると踏み、家に戻ることにした


あ………

こんなとこにケーキ屋があるのか


さっきは必死になって走っていたから気付かなかった街の大通り

道すがら、目に留まったのはケーキ屋


『ねぇねぇ、トーゴ。この真っ白いの、何?』


『あ?生クリームだよ』


『ふーん』


『甘いぞ』


『うにゃっ!何、これ!甘い!すごい!美味しい!』


生クリームたっぷりのイチゴのショートケーキに目を輝かせ、フォークで食べることも忘れ、鼻の頭や口元、顎まで生クリームを付けながら美味しそうに頬張っていたナツ

それからは馬鹿の一つ覚えみたいに、ケーキを見るたびにねだられるようになった
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