猫の恩返し
ふて腐れても、いつもすぐに機嫌を直していた

どんなに怒っていても、夜は必ず家に居た


………どこに居るんだよ…


自分の部屋に戻り、ベッドに腰掛けて前髪をクシャッと掴む


誘拐、事故、殺害

色んなことが脳裏を掠(かす)めた

不安で胸が押し潰されそうだ


ん?


携帯の呼び出し音で、遠のきそうだった意識が戻る


職場…?


「はい、小岩井です」


『小岩井主任、何やってるんですか!?』


相手は、小声ながら怒った口調の牧野だ


「は?何って…どういうことだ」


『今、どこです?』


相変わらずヒソヒソ声


「今は家」


『何やってるんですか!もう、就業時間過ぎてますよ!』


「はぁ?」


言われている意味が分からなくて、サイドテーブルの目覚ましに目をやる
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