猫の恩返し
「嘘…だろ…」


時計の針は9時20分

無断欠勤もいいところだ


『どうしたんですか?休み前からそんな調子ですよね?』


「…悪い。その件に関しては、俺が至らなかったと思ってる」


『今日…どうされるんですか?』


はぁ…と、短い溜息の後で困ったように聞く牧野


「今から行く。10時までには着くから、午前休にしておいてくれるか」


『………分かりました。お気を付けて』


通話が切れるのを確認してボタンを押す

電話を耳に押し当てていた手が、力なくベッドに落ちた


………牧野も…何も知らないのか


失意のまま、Tシャツの上からカッターシャツを羽織り、ネクタイを締める

この一連の作業さえ、気怠(けだる)くてやる気が起きない

いつもならナツの作った朝ご飯を食べて出るが、今日は何も食べずそのまま家を出た
< 162 / 215 >

この作品をシェア

pagetop