猫の恩返し
「う───っ、結構濡れたな。冷てー」


縁側でプルプルと頭を振り、雪を落とす

肩の雪は、体の熱で溶けたみたいだ

ナツの手を離してバスタオルを取りに行き、自分の髪をガシガシと拭きながら縁側に戻った

縁に腰掛け外を見るナツの頬から、しずくが落ちていく


「ナツ?」


一瞬ハッとした顔になり、笑顔で振り返った


「何?」


「え…あ…いや、タオル…」


反対の手に持っていたバスタオルを渡すと、『ありがと』と笑顔で受け取りそれに顔を埋めた


気の…せいか…?


見間違いじゃなければ、あれは雪が溶けて落ちたんじゃなく、ナツの涙

視界の端でナツを盗み見ても、泣いてるような気配はまったくない


何かあったら、直接言ってくるよな?


言い出せないモヤモヤを抱え、ナツに背中を向けて上半身だけ浴衣を脱ぐ

冷たくなった肩を拭いていると、背中にナツの体温を感じた
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