猫の恩返し
「ちょっ…ナツ。引っ付いてたら拭けないだろ」


冷えた頬と手のひらが、俺の背中の熱を奪っていく


「トーゴ…温(あった)かい…」


「お前は猫のくせに冷た過ぎるんだよ」


猫は、人間と違って平熱が38度以上あるらしい


「じゃあさ、トーゴが温めてよ」


何言ってんだ、こいつ

意味分かってんのか?


心臓が嫌でも高鳴る


「あのね、私も暇だから色々調べたの」


「調べたって、何を…」


背中を意識しないように、必死で違うことを考えようとした


「猫と人間の違いとか…。男と女のこととか…。人も、猫と同じように子孫を残すのは理解出来るけど、男と女の複雑な感情っていうのは本を調べても分からなかった。人間って、難しいんだね…」


「…そうだな」


「だから、トーゴが教えて?トーゴとなら…何か分かるかもしれない」


腰に両手を回され、ギュッと抱き締められる

せっかく違うことを考えようとしても、嫌でも意識がそっちに向かう
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