猫の恩返し
「そんな勢いみたいな状態で、理解出来るわけねーだろ」


「………」


「分かったんなら、離れろ」


バスタオルから手を離し、ナツの両手を引き剥がした

この手を取ってしまえたら、どれだけ楽だろう

中学の時以降、就職するまで勉強が一番だったから、そんなに女に飢えたことも妄想したこともない

それなのに、人間ではないと分かっていながら好きになった

そんなやつが毎日隣に居て、平静でいられるわけがない

無邪気で恋愛感情を理解出来ていないナツに、こんな気持ち押し付けるわけにはいかないし、これ以上生殺しの状態に置かれるのもごめんだ


「風呂…入ってくる」


落としたバスタオルを拾い上げ、俯いているナツの横をすり抜け風呂に向かった
< 196 / 215 >

この作品をシェア

pagetop