猫の恩返し
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風呂から上がってくるとナツの姿はなく、隣の部屋の襖を開けると白熱灯のオレンジの薄明りの中で布団が一つ盛り上がっていた


寝た…か…


ずいぶん長湯してしまった

浸かり過ぎて、出る時にめまいがしたほどだ

そのくせ、煩悩も何も払えなくて…

世の中で『草食系』や『絶食系』やら言われてるらしいが、『絶食系』になれたらどれほど楽だろう


情けねぇ…


「くぁっ…」


布団を見ていたら、眠気が襲ってきた

長時間運転しっぱなしだったから、当然といえば当然だが───


俺も寝よ


襖を閉じて枕元に行くと、ナツの顔が見えない

頭まですっぽり布団を被って寝ている

ぴったりと引っ付いている布団に潜り込み、顔の見えないナツに『おやすみ』と声を掛け、眠りに就いた
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