猫の恩返し
「私ね………この下に居るの」


ナツが指したのは、柵から少し奥に入った雪の中


「何…で」


「ここ…、空に一番近いんでしょ?お母さん達にすぐに会えると思って…。それに、トーゴにも………」


「分かんねーよ!こんな場所に居ないで!ちゃんと………ちゃんと家に…帰って来い…」


自分の声が震えていた

30も過ぎた大人が、バカなことを言ってるのも分かってる

だけど、それで納得するほど出来た人間にはなれない


「私、トーゴに拾ってもらえて幸せだった。お腹も痛くて…泣きそうになることいっぱいあったけど…。それでも、トーゴが心配するって思ったら、笑っていられた…」


そうだ

ナツがもっと早く、体の異変を教えてくれてたら…
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