猫の恩返し
「歩きにくい…」


頬を膨らませたまま、片足を上げて自分の足裏を見るナツ


「仕方ないだろ。外歩く時は、ちゃんと靴とか履かなきゃ駄目なんだよ」


「トーゴのトコでは、何も履いてなかった」


「部屋の中は、別に履かなくていいの」


「何で?」


「何でって…。そう決まってるんだよ」


理屈が分からないのは仕方がないと思いつつ、子供のように「どうして」や「何で」と言われると返事に窮する

こんな時、自分の国語力の低さが悲しい


「お客様…お会計よろしいでしょうか?」


「ああ…。はいはい」


店員が、こちらの様子を伺いながら話しかけてくる

レジに行きレジ台の上に置かれた大きな紙袋を覗くと、中には服がぎっしり詰まっていた


………絶対、ここの店員が勝手に入れたんだろうな…


そう思うと溜息が漏れたが、たかが服ぐらいで騒ぐのも面倒なので、黙って会計をしてもらう


すると───


「お会計、5万8千675円になりまぁーす」


ご…5万?!

女の服の値段って分かんね───…
< 27 / 215 >

この作品をシェア

pagetop