猫の恩返し
昼飯…どうすっかな…

惣菜とかでも適当に買って帰るか


カゴを持ち店内をプラプラしていると、傍に居たはずのナツが居ない


「あっ…れ………。ナツ?ナツーッ!」


キョロキョロとしながらナツを捜す

ナツを見つけたのは、野菜のコーナー

トマトを指先で突いたり、両手でカボチャを上げてみたり


子供かよッ


そんなセリフが頭に浮かび、なぜか微笑ましくなる

結婚もしていない…どころか彼女すら居ないくせに、なぜか我が子を見守る父親の心境になった


「ナツー。置いてくぞ」


一瞬だけ小首を傾げ、耳が少しだけこちらに向く形になったが、好奇心をくすぐられるのか振り返りはしない

ナツが猫の姿をしていたら、きっと耳だけピクピクとなっているんだろうな…そう思う

そして、キュウリを手に取ったかと思うと『ボキッ』と音がして、無残にも真っ二つに割れた


「あ─────っ!!!」


俺の声にビクッと体を震わせ、肩を竦めるナツ

片方ずつに割れたキュウリを握り締めたまま、ソロソロと俺の方を振り返る
< 30 / 215 >

この作品をシェア

pagetop