猫の恩返し
△▼△▼△▼



「トーゴ…」


女子トイレまで案内し廊下の壁にもたれて待っていると、中からナツがひょっこりと姿を見せた


「終わったのか?」


そう聞くと、黙って首を横に振る


「どうしたらいいか分からない…。トーゴついて来て」


瞳をウルウルと潤ませ、切ない顔で俺を見上げた

こんなに困った表情をされたらついて行ってやりたくなる

でも───

だからといって、女子トイレに堂々と乗り込んで痴漢扱いはされたくない


「………」


仕方ない


「ちょっと待ってろ」


そう言ってナツを残し、会計課に戻った


「牧野」


パソコンと睨めっこをしている牧野に声を掛けると、視線はパソコンのまま短く『はい』とだけ答える

しばらくしても何も言わない俺を気にして顔を上げた牧野に、手招きをして廊下に誘い出した


「どうしたんですか?」


「いや…。その…実はな、牧野にお願いがあるんだ」


俺の言葉に何か引っ掛かりがあったようで、眉間に皺を寄せ明らかに困ったような表情になる
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