猫の恩返し
「主任が私にお願いごとなんて、珍しいですね」


「まぁ…。人間、1人じゃ生きていけないしな」


「どうしたんですか?そんなに大それたお願い…私、無理ですよ?」


俺の言葉に吹き出し、面白そうに肩を揺らす


「うーん…。他のヤツらにしたら、たいしたことないことかもしれないけど、俺にとっちゃ一大事だな」


『へぇ…』と、興味深そうに頷く牧野


「あのさ…。俺のこと…頭おかしいと思ってもいいから」


それこそ、ポカンとして俺を見上げた


「いや…その………。ナツのことなんだ」


「彼女さんがどうしたんですか?」


「アイツな…。実は猫なんだよ」


「ね………」


『猫?』と言いたかったんだろう

眉間に皺を寄せたまま、固まっている


「あ…。普通、そうだよな…。コイツ、頭おかしいって思うよな…」


恥ずかしさと後悔で、背筋が冷たくなっていく

署内は涼しいのに、背中に冷や汗が流れた気がした
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