猫の恩返し
「一晩だけですけど、教えられることは教えましたよ?」


「教えられること───」


そんなにあったか?


思わず首を傾げる


「昨日、小岩井主任が言ってた『猫』って意味…よく分かりました」


「アイツ…何かしたのか?」


「色々」


そう言って、眉を寄せ苦笑する牧野


「でも………少しは人間らしくなったと思います」


確かに、さっきのナツは昨日までのナツとちょっと違った


「サンキュ」


「どういたしまして。頑張ったみたいなんで、ナツちゃん褒めてあげて下さいね」


「ああ…」


何のことかよく分からないが、とりあえず相槌を打つ


「それじゃ、私は仕事があるので席に戻ります」


事務所に戻る牧野を見送ると、代わりにナツが出てきた


「トーゴ!」


俺の許まで走り寄ってきて、いきなり抱きつかれる


「ちょっ!ナ、ナツ!!!」


ここ職場ッ!


肩に回された両腕を引き剥がしナツを見ると、唇を尖らせ膨れていた
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