猫の恩返し
「ねー、開けて開けて」


早くと急かされ、袋から弁当箱を取り出し蓋を開いた


………

んだ、これ…


すすけた黄色の物体


「んーとねぇー。何だっけ、えっとー。その…あのね」


眉間に皺を寄せ、顎に人差し指を当てて天井を見上げる


黄色…ってことは…


「ひょっとして、玉子焼きか何かか…?」


「あっ!そう、それっ!」


いや…冗談のつもりだったんだけど………


こんなに焦げた料理を食べたら、絶対体壊す気がする


「食べて!ねー、トーゴ食べてよ」


「あ…え…っと………」


「食べない…の?」


目を潤ませ、唇を尖らせるナツ

男の性なのか、ただ単に欲目なのか…

ものすごく期待された目で見られていると、断るに断れない


あ─────、もぉ!

食ってやるよ

食えばいいんだろっ!


玉子焼き以外にも、黒く焦げた物体ばっかりだ

半ば自棄(やけ)になり、そのうちの1つを取って口に入れた
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